お手入れ方法・保管及び取り扱いの留意点

 お手入れ方法

降雨や水しぶきなどで竿が水濡れした場合は、布で乾拭き後、仕舞い収納せずに数日間、陰干しをして下さい。又、汚れがある場合や海釣りで潮風に晒した場合は、水をよく絞った布で水拭きして汚れを落としてから乾拭きして下さい。

汚れが酷い場合や落ち難い場合は、素手で絞れる程度の温度のお湯で湯拭きしますと汚れが落ちやすく効果的です。洗剤やシンナー類などの科学薬品は使用しない方が無難です。

布地での胴拭き取りは、力を入れ過ぎますと、表面の艶漆が摩耗し、光沢の劣化が早くなります。拭き取り加減は、必要最小限で行うのがよろしいです。
(艶漆の補修塗りメインテナンスは行っておりますが、通常、5年以上毎の頻度です。)

拭き取りで使用します布地は、「ブロード」とか「ネル」とか呼ばれます織り方の柔らかく緻密な純綿布を推奨致します。布地店で販売されていますので入手できるかと思います。手近なところで間に合わせたい場合は、「日本手拭い」などがよろしいかと思います。又、竿表面のホコリ取りは、手軽なペーパー類などが多く流通しており、良いものもあるかもしれませんが、経験上は、絹布がお勧めです。

海釣り用ガイド竿の場合は、ガイドやリールシートの金属部が腐食劣化する懸念があります。ステンレスやクロームメッキなどは防錆性があり、赤錆が発生することはありませんが、手入れを怠りますと、青錆が発生したり黒く変色したりしてメッキが剥がれてきたりもします。金属パーツ部は釣行事前に油付けしておきますと防錆効果が高いです。油は、サビ止め専用油は効果が高いですが、竹材との相性を考慮しますと竿手入れ用の純正椿油を推奨します。油付けは、パーツ部に指で塗布して、布かティッシュペーパーで軽く伸ばして拭き取り下さい。又、釣行後にも事前時と同様にパーツ部に油付けして保管しますと更に劣化防止効果が期待できます。


 保管の留意点

※直射日光を避けて保管して下さい。

 直射日光(紫外線)は、竹の大切な細胞や漆を傷めますし、割れの原因にもなります。
 

※高温多湿の場所(例えば、風通しがなく湿気が隠りやすいコンクリートブロック小屋など)での保管は、お避け下さい。

 竹は、本来、数年で自然に枯れて次世代の竹の養分(土)になるサイクルを繰り返しています。したがって自然の竹林環境のように、日光や雨に晒したり多湿の場所に置きっぱなしにすると、竹の細胞は徐々に傷んでゆき、やがては自然に枯れた竹と同じ状態となってしまいます。保管方はいたって簡単です。竹は人と同じく生き物ものです。人が快適に生活している環境(家屋内)で保管すれば問題ありませが、天然竹は乾湿の影響を大きく受けますので、エアコン・暖房器具・加湿器などの付近での保管は避ける配慮は必要です。


※竹竿の保管は、縦置きが基本です。二点支持の横置きは、お避け下さい。

 竿掛けなどを利用した二点支持の横置きで保管した場合は、スパン(間隔)長や竿重量により程度は異なりますが、竿自体の自重によるモーメントが常時、作用している状態と成り、細身の竿では、反り曲がりが出る場合があり、また、反らない場合でも竹には負担が掛かっています。その他、べたの横置きで保管する場合は、特に平屋などでは湿気が隠りやすいので注意が必要です。竹が自然に生えている状態(縦向き)が保管の基本です。


竹竿の保管法は、製作者毎で意見が分かれている部分もございますが、当工房では、付属の綿製竿袋に入れた状態での縦て置きを基本に推奨しています。天然綿は乾湿の調整効果がありますので、肌着の着用と同じ感覚で竿袋を利用すると良いと思います。また、縦置きする場合でも出来れば、上下端が支点となる置き方よりも、ロッドスタンド等を利用した方がより負担が軽減される為、お奨めです。その他、木製ケース(前面が開くタイプ)付属の竿は蓋は開けて、竹筒又は、木箱筒付属の竿は筒から出して保存する方が良いと思います。また、並継ぎ竿は、時々は中身を取り出して屋内で影干すると良いです。竹の口栓や、中の繊維にカビが発生する場合は、保存状態が良くない証拠で要注意が必要です。
 


取り扱いの留意点

※和竿の餌付け時、及び、丸竹ロッドのルアー・フライの交換時の際はラインをたるませた状態で行って下さい。

 カーボン竿と同じ感覚で、ラインを張った状態で餌付けして竿先端部だけ部分的に曲げますと、魚を掛ける以上に竹材に負荷が生じ、大切な竹繊維を痛めかねません。ちょっとした使用操作の配慮で、竹竿の運命は大きく変わります。


※竹竿は部分的に手で曲げないで下さい。

 強度を確かめたい・・・・曲がり調子(バランス)を見たい・・・・反り曲がりを直したい・・・などの理由で、竹竿を手でこねる(曲げる)方があまりにも多いのですが、竹の強度などの性質を熟知していない方が手曲げする行為は、大変なリスクを伴います。無理に部分的に手でこねて繊維を伸ばしてしまう、いわゆる「腰抜け」状態を招いてしまいますと、もうお終いです。竹竿は、もし、割れ破損しましても復旧修理が可能ですが、保管状態や取り扱いの不注意で、竹繊維自体を痛めてしまうと復旧修理は難しく、費用と時間を要します交換修理となりますので、十分に、ご配慮して頂きますようお願い致します。


※竿に瞬間的に大きな負荷が掛からないような操作をお願い致します。

 竹の種類によりその程度は異なりますが、概ね節の部分は、ゆっくりと作用する負荷に対しては、節間部分より強い箇所ですが、一転、瞬時に作用する負荷に対しては、脆く折れやすい箇所でもあります。したがって、魚を掛けてからのやりとり時(ファイト時)よりも瞬間的に負荷が作用するアワセ時(フッキング時)や振り込み時(キャスト時)の方がよりソフトな操作が必要です。竹の繊維は優れものです。竹の特性を踏まえて竿を扱えば、細身の竿でも大物が仕留められます。


※夏場の炎天下での長時間使用は避けて下さい。

 竹竿は、日中の通常使用には耐えられるように作製しておりますが、使用頻度に比例して紫外線により劣化しているのも事実であります。特に負担が大きい夏場の炎天下時は、魚の活性も低下しますし、竿も人も一服して下さい。


※竿の継ぎ方。

 継ぎ竿を継ぐ時は、先から元へ芽が交互になるように継ぎ、抜く時は、元から先へ順に抜いて下さい。


※コミ(ジョイント)には、軽くロウを塗ってお使い下さい。ロウは、蝋燭で十分です。

 竹竿のコミ(ジョイント)の締まり具合は、季節や気象条件により微妙に変化します。又、経年と共に概ね、きつくなる傾向にあります。入り残りが出る場合や緩んで抜けやすくなった場合は、調整にお出し下さい。そのままの使用は口割れの原因になります。又、特にキャスト(振り込み操作)の頻度が多い、「丸竹ロッド」や「へら鮒和竿」等などは、使用中に緩んでくる場合がありますので、時々、締まり具合を確認することをお薦め致します。


※手入れ油について

 和竿の手入れ油は一般的には椿油が使われていますが、昔のような純正油が入手できればよいのですが、防錆材・防腐剤・香料・着色料・保存料等の添加物が混入している油の場合は、竹の細胞に悪影響を及ぼす懸念があります。漆塗料は化学塗料とは異なり、浸透性がかなりあり、一度油を塗ると長期間、竹の繊維内に油が浸透した状態になる場合もありますので、安全性の高い油を選択する必要があると思います。又、手入れ油は、艶出しや防水効果が期待できる一方で、付け過ぎますと、湿気が高い時期などは竹内部にかえって湿気が隠ったりする逆効果になり兼ねませんので注意する必要があります。差し込みに使われています鬢付油の使用にも同様のことが言えると思います。


※雨天時の御使用について。

 当工房で作製しております竹竿の塗装はすべて本漆仕様であります。本漆は、化学塗料とは異なり透湿性があります。したがって雨天時に使用する場合は、水分が少なからず竹に染み込んできます。(逆に透湿性があることは湿気が竹材内に隠らない長所でもありますが)竹材が極端に湿気過多の状態になりますと、火入れ(曲がり矯正)する前の元竹の曲がりクセが再び出てしまうリスクが生じます。特に細身作りの竿で、曲がりクセが気になる場合には、雨天時の御使用は避けて頂く方が無難ではあります。ただ、どんな釣りでも雨天時には、釣果の方は好転する場合が多いもので、もし使用途中に雨が降り出した場合には、そのまま御使用して頂いても良いと思います。当工房では、もし、竿を濡らしてしまった場合でも、コミが抜けなくなるトラブルを避ける継ぎ手仕様にしております。ただ、濡らした場合には、納竿後には、出来るだけ早く水分を拭き取り直ちに日影干しを行って下さい。もし、濡らした状態のままで、高温内のトランクなどに長時間蒸し込んでしまうと、曲がりクセが出るばかりか、大切な竹の細胞自体も傷めますので、十分にご配慮下さい。


※天然竹製の竹竿は、曲がり癖が出る場合があります。

 曲がり癖が出る要因には、原竹の自然乾燥の度合いや、素材選定、組み合わせ(バランス)、火入れ作業などでの製作技術に因るところが大きいですが、竿の保管状態やその扱い方にも大きく作用されます。淡水用和竿などの延べ竿の場合は、負担が一方向に偏らないよう時々手元を回しながら使用すると癖が付きにくく成ります。また、ガイド竿では、負荷が一定方向に偏りがちになりますが、時々竿を伸ばす感じで振りながら使用すると癖が出にくいです。また、納竿時にも竿を伸ばす感じで振ってから仕舞いますと自然復元の効果もありますので試して見て下さい。


※曲がりが出た場合は、手で無理に戻さないで下さい。

 複数回火入れ処理した竹には、復元力があります。湿気で竹の元の曲がりが出た場合は、矯正の火入れをしないと直りませんが、使用過多による反り曲がりの場合は、自然に復元する可能性があります。竿を全部継いだ状態で曲がりを伸ばす感じで竿を振って数日様子を見て下さい。その上、元に戻らない場合には調整にお出し下さい。万一、大きく反った場合でも、火入れすればきれいに元に戻せますが、無理に手で矯正して繊維を伸ばしてしまうと修理が難しくなります。


※新作竿や注文誂え品などの完成して間もない竿の場合は、ご使用するまでに漆の硬化養生期間をお取り下さい。

 本漆塗料の場合は、表面上は硬化している場合でも、塗り立ての塗膜は柔らかく、実際に強度が出て安定し丈夫になるまでにはある程度の時間を要しますので、竿をご使用するまでに漆の硬化養生期間を取ることをお奨め致します。養生期間の目安は、最短でも1〜3ヶ月、出来れば3ヶ月以上、推奨は6ヶ月以上、理想は1年以上ですが、誰しも早く試し釣りをしたい事と思いますので、もし早期にご使用される場合は、前記の期間中は、漆の性質を考慮した慎重な取り扱いをお願い致します。